昨日は知研関西セミナー。20年振りに会員の田島さんに燃料電池の話をしていただきました。
大部の資料で分かりやすかったのですが、圧巻は国際標準をとるため世界中の技術者との丁々発止のやり取り。グローバル化と言う話を聞いています
が、えらい世界になっているんですね。マスコミはこういった話をもっと報道してもらうと、国際ニュースがもっと分かりやすくなるんですが。
■家庭用燃料電池エネ・ファーム
火力発電所から送電すると送電ロスなどで家庭に届く頃には38%になっています。家庭用燃料電池エネ・ファームなら発電所を家庭に設置したのと同じなので電気とお湯(熱)が取り出せ、効率は85%に向上。まさに発電の地産池消ですが、課題もたくさんあります。
まず高い!金額は270万円で補助金は100万ほど出ますが、ガスや電気の節約でみると年間6万円ほど。寿命は10年ですのでモトはとれません。
ただしこれは余った電気の売電単価が太陽光発電に比べてメチャクチャ安くなっているためです。ガス会社と電力会社は競走していましたので安い売電料です
が、この金額が高くなると工場の自家発電と同じですので、節電効果が高くなります。
燃料電池は発電ですが、反応させるには温度を上げる必要があり、この時、電気が必要で、停電になると使えません。バッテリーで電気を使わないシステムはできていますがコスト高になります。
また高校生の子供などがいて、よくお湯に入っている家庭では省エネになりますが、一人世帯であまりお湯を使わなければ反対に増エネになってしまいます。全ての家庭に向いている商品ではありません。
■国際標準を取るための丁々発止
日本の燃料電池の技術はかなり進んでいますが、太陽光発電をみても普及期になると韓国や中国に負けてしまうのが世の常。これは国際標準をとっていないからで、市場を押さえるのは国際標準をとらなえればなりません。
WTOに貿易の技術的障害に関する協定というのがあり、国際規格に基づいて認証を受けた製品の輸入を、JIS規格などで排除したらだめよという制
度です。日本は技術的に優秀でしたのでJIS規格などを制定してきましたが、これがためにガラスパゴになっています。実際、2001年にシンガポールで2
槽式自動洗濯機の輸入差し止め事件が発生しました。脱水槽の蓋を開けた時に日本はゆるやかに止まるブレーキ機構をJISで作っていましたが、国際標準は欧
米の1槽式回転ドラムを前提としたすぐに止まる規格。JIS規格の製品なら世界で受け入れられると思っていた日本企業に冷や水を浴びせる事件となりまし
た。
燃料電池の世界では国際標準をとらないと太陽光発電などの二の舞になります。そこで重要なのがコンビーナ(議長)という役職。国際標準を検討する
機関では技術課題に従ってワーキンググループを作り、規格を定めていきますが、ここで音頭をとるのがコンビーナ(議長)で発言力があります。燃料電池に関
しては技術が進んでいる日本はいろいろなワーキンググループでコンビーナ(議長)になっています。田島さんはISO/TC197
WG14(定置用燃料電池の水素燃料仕様)のコンビーナで、欧米から参加した技術者と丁々発止で規格を決めています。
ワーキンググループの公用語は英語。毎年、違う国で会議が行われますが、ここで日本の今まで開発してきた燃料電池の技術が国際標準になると日本のメーカーにとっては世界で戦えることになります。ビジネスの最前線は国際標準なんですね!