きょう、5月20日は「ローマ字の日」。
日本ローマ字会という団体があり設立は明治18年。戦時中は特高にマークされ、戦後はGHQから国粋主義者とみられ、暗殺されそうになったなど、いろいろと秘話があります。過去の参加メンバーをみると寺田寅彦や各大学の学長、著名人など綺羅星のごとく名前がならんでいて、日本ローマ字会の最後の会長が梅棹忠夫先生。
梅棹先生には知的生産の技術研究会の特別顧問をおねがいしていた関係もあり、私も10年ほど社団法人日本ローマ字会の理事を担当していました。公益社団法人化にともない本部が京都から東京へ移動することとなって、ようやく理事をお役ごめんになりました。梅棹先生はエスペランティストであり、日本語の国際化にはローマ字運動が必要だと、晩年はローマ字運動にとりくんでおられました。
●漢字の中国が隣国だった
日本は7世紀から9世紀にかけて漢字をとりいれましたが日本語は50音だけの言語で正確な中国語ではなく、なまった音を導入しました。これが「音読み」になっています。また意味をあらわす「訓読み」の2つの読みかたを併用しました。
梅棹先生によれば漢字を借用した国のなかで、こんなことをしたのは日本だけ。ベトナムや韓国でも漢字を導入しましたが読みはひとつだけです。日本では国語を学習するのに必要な時間が10倍にはねあがり、自分たちの言語を学ぶのに数年をようする状態になっています。
日本は大国・中国のとなりに位置したがゆえに、本質的に構造のことなる漢字を導入し、とんでもない運命にひきずりこまれました。お隣の韓国はチベットから伝わったモンゴル(元)のパスパ文字を使って、ハングルを14世紀、15世紀頃に成立させましたので、この事例に学ぶべきだともよくおっしゃていました。
●索引がない学術書は読む価値がない
梅棹先生がよくおしゃっていたのが索引の重要性。欧米なら簡単にできあがってしまう索引が日本では作れず、梅棹忠夫全集の索引をつくるのにも1年かかったそうです。
まず単語の読みかたがわかりません。とくに人名は絶望的で、東(あずま)なのか東(ひがし)なのか本人に確認しなければ読みかたがわからないような名前は、ほかの国にはありません。欧米で索引がない学術書は、読む価値がないとされますが日本では索引のない学術書がおおくあります。
また日本語には同音異義がおおく、聞いただけでは理解できない言語になっています。例えば科学と化学がありますが、化学(ばけがく)とよめば同音意義語が減り、留学生や日本に興味のある人にとって学びやすい言語、つまり国際化できるとよくおっしゃっておられました。
漢字を入力する時にローマ字仮名変換していますので、ローマ字を入力した時点で漢字変換しなければ、ローマ字文章になります。さすがにローマ字は読みづらいので、なるべく同音異義語を使わず漢字も極力へらした平易な文章をかくように心がけてはいるんですが、むずかしいですね。
写真は知研関西とローマ字会の共催で梅棹先生に「21世紀版 文明の生態史観」でお話しいただいた時のものです。