新たな鳥獣戯画図と文字が発見される

鳥獣戯画図
京都・栂尾の高山寺に伝わる国宝・鳥獣戯画図。鳥獣戯画図は甲・乙・丙・丁と呼ばれる全4巻から構成されていますが、京都文化財研究所が調査を行ったところ、新たに「壬(みずのえ)の巻」が発見されました。調査した三好長慶教授によると高山寺近くにある名刹・狸山寺の住職が蔵の虫干しをしていた時に長櫃を見つけたことが発端。長櫃には巻物が入っており、今まで見たことがない鳥獣戯画図という住職からの連絡で緊急調査したところ今回の発見につながりました。

■鳥獣戯画図・壬の巻
新しく発見された”壬の巻”には国宝・鳥獣戯画図と同様にカエルとウサギが描かれ、特徴的なのは真ん中でカエルがひっくりかえっている点です。右にはウサギとカエルが水のようなものが入った甕を運んでいる様が描かれています。三好長慶教授によると国宝・鳥獣戯画図が描かれたのは平安時代末期から鎌倉時代初期であり、この図は台頭する武士階級を甕で象徴し、そのあおりで没落する貴族を、ひっくりかえったカエルで表現しているのではと解説しています。

■文字も発見される
さらにX線で調査をしたところ巻物には文字が書かれていることが判明し、解読したところ仮名で「さけのみしみずたにのきみ」と書かれていました。意味について現在も研究がすすんでいますが、松永久秀准教授によると書かれている文字は「酒飲みし 水谷の君」ではないかと推測しています。最下層の貴族である侍品(さむらいほん)に”水谷朝臣”の名前があり、水谷朝臣は記録によれば伊勢平氏一族ですが、台頭する河内源氏に対し憤懣やるかたなく、酒で憂さ晴らしをしている図ではないか、つまり真ん中で酒を飲んでひっくり返っているのが”水谷の君”、右で運んでいるのは酒甕ではないかと推測しています。

”壬の巻”が見つかったことで、甲・乙・丙・丁以外の戊・己・庚・辛・癸の巻があるのではないかと関係者の間では期待が高まっています。

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