江戸時代、各藩で大名行列が行われていましたが藩から全て移動するわけではなく、必要最低限の人間が江戸まで旅をしていました。
江戸の手前で人足を雇って大名行列を仕立てます。つまりアルバイトですね、京都の時代祭で学生アルバイトを雇っていますが、あれとよく似たものです。人足を派遣する口入屋がありました。ところが明治維新になってしまい、廃藩置県が行われて大名行列がなくなってしまいました。
外部市場がいきなり、なくなってしまったわけです。これは色々な商売で起きていて、例えば暦を作っていた業者がいましたが、いきなり太陽暦に変わってしまい、太陽暦しか売ったらダメだと言われて日しか書いていない味気ない暦が売れなくなってしまいました。
そこで考えたのが六曜。結婚式は大安吉日がよいとか葬式は友引を避けるとか現在でも使っているものです。単なる迷信でしたが、新暦にあてはめるとけっこう不思議な感じがして、庶民に流行してしまいました。今も上棟式を大安にするようなことになったのは、この暦業者が苦肉の策で掲載した販売促進が元凶です。
さて大名行列の口入屋ですが、市場がなくなってしまったので新規事業で考えたのが葬式行列(葬列)。それまでしめやかに行われていた葬送を、たくさんの行列でショー化することに成功。皆が、葬列を出すようになりました。大名行列でつちかった能力があるので先頭には奴の行列まであったそうです。昭和の初めころまであったようです。
朝日文庫から「増補新版 霊柩車の誕生」(井上章一著)という本が新しく出ていて、この葬列の経営革新の話が出ていました。この井上先生には「人形の誘惑--カーネルサンダースからの知的調査術」というタイトルで、話をしてもらったのは1999年。阪神タイガースが優勝できないのは道頓堀川に沈んだカーネルサンダースの呪いだとまことしやかにささやかれていた頃です。